ヒノキの土台でもシロアリは食べる?心材と辺材で変わる防蟻効果

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ヒノキの土台を確認する夫婦と住宅模型、虫眼鏡の水彩イラスト

家づくりで土台にヒノキを選べば、シロアリは寄ってこないのでしょうか。答えは半分だけ正しい、です。ヒノキの心材には防蟻成分が含まれ、試験でもイエシロアリの食害が痕跡程度にとどまりました。ところが辺材にはその成分がほとんどなく、薬剤処理をしていなければヒノキの土台でも食べられます。

土台に使う角材には、心材と辺材の両方が入っているのがふつうです。つまり「ヒノキを使ったから安心」と考えて防蟻処理を省くと、辺材の部分から被害が始まります。この記事では、2026年10月3日時点で確認できた情報をもとに、ヒノキの強みと弱点、制度上の扱い、新築時に組み合わせたい対策、5年ごとの再処理にかかる費用の目安まで順に整理します。読み終えるころには、ヒノキの土台に何を足せば安全側に倒せるのかが分かるはずです。

家の模型と虫眼鏡を前に、間取り図を見ながら話し合う夫婦
目次

ヒノキの心材はシロアリに強いが、辺材は食べられる

ヒノキの角材を輪切りにした図。中心の心材は防蟻成分を含みシロアリが避け、外側の辺材は好んで食べられる

結論から言うと、ヒノキの強さは心材に限った話です。ヒノキの丸太は、中心の心材と外側の辺材でできています。心材は組織が詰まって硬く、防蟻成分を含みます。シロアリは、この硬い心材を避ける傾向があります。一方の辺材は柔らかく、防蟻成分がほとんどありません。シロアリにとっては、むしろ好んで食べたい部分です。

部位性質シロアリとの関係
心材組織が詰まって硬い。防蟻成分を含む避ける傾向がある
辺材柔らかい。防蟻成分がほとんどない好んで食べる

住宅用の木材には心材と辺材の両方が含まれます。ヒノキの土台と書かれていても、角材のすべてが心材とは限りません。「ヒノキだから強い」という言い方は、心材だけを指すなら正しく、角材全体を指すなら正確ではないのです。

ヒノキチオールが防蟻の鍵で、試験でも食害は痕跡程度だった

ヒノキを含む針葉樹には、ヒノキチオールなどの精油成分が含まれています。ヒノキチオールは抗菌と防虫の働きを持つ成分で、シロアリやカビ、ダニを遠ざける目的で語られてきました。天然由来で環境への負荷が小さい点も、住宅の素材として好まれる理由のひとつです。

ここまでは「昔からそう言われている」という話ですが、試験データもあります。イエシロアリを使った耐蟻性試験では、スギ心材とヒノキ心材への食害は痕跡程度にとどまり、質量減少率は低い値を示しました。ヒノキの防蟻効果は、まったくの俗説ではありません。心材については、数字で裏づけが取れています。

国産の構造材の中で比べると、耐蟻性の強さはおおむねヒバ、ヒノキ、スギの順です。ヒバにもヒノキチオールが豊富に含まれ、シロアリを遠ざける働きを発揮します。ヒノキは2番手、というのがこの順位の読み方です。

京都大学の研究も見逃せません。鹿児島、兵庫、長野、福島の4地域で採取したヒノキ材を、辺材、移行材、心材に分けて、耐朽性と耐蟻性を調べる試験用の試片が作られています。産地ごとに分けて調べる研究が成り立つのは、ヒノキの耐久性が木のどの部分か、どの産地かで変わりうるからです。「ヒノキ」とひとまとめにして語ること自体が、少し雑なのかもしれません。

辺材には保存処理が必要と、業界団体が2021年から訴えている

辺材の扱いについては、業界団体が明確に注意を促しています。日本木材防腐工業組合の技術委員会は2021年7月に、住宅などを設計する人に向けて「ヒノキ等の高耐久な樹種であっても辺材は適切な保存処理が必要です」という文書を作成しました。2022年には、木材保存の学術誌(Vol.48-1)にも同じ趣旨の内容が載っています。

理由は、辺材の成分にあります。辺材には糖類やでんぷんが多く含まれ、これらは腐朽菌やシロアリにとって栄養になります。心材より耐朽性が低いのも、そのためです。ヒノキ、ヒバなどの高耐久樹種に分類される木材でも、辺材は腐朽やシロアリの被害を受けやすいままです。

薬剤処理が不要とされる特定のD1樹種(ヒノキなど)であっても、辺材が含まれる場合は、その部分に薬剤処理が必要になります。設計者や施主が「ヒノキだから不要」と読み飛ばしがちな、いちばん大事な但し書きです。

国土交通省の評価はヒノキ心材が「中」、辺材は「小」

国土交通省が示す樹種ごとのシロアリ耐性では、ヒノキは心材部分のみが耐蟻性「中」と評価されています。辺材は耐蟻性「小」の側に含まれます。

注目したいのは、最上位の「大」ではなく「中」だという点です。ヒノキの心材は確かにシロアリに強いのですが、無敵ではありません。ヒノキ神話を冷静に見直すなら、この「中」という数字を頭に置いておくのが近道です。

日経ホームビルダーの特集は「ヒノキ神話」に疑問を投げかけた

建築実務の側でも、ヒノキ信仰への疑問が出ています。日経ホームビルダーは「独自実験! ヒノキ神話『シロアリに強い』は本当か?」という特集を組みました。「危ういヒノキ信仰への依存」という記事も載せています。住宅実務者の間には、ヒノキはシロアリを寄せつけないという信仰が根強く残っていて、現実にはヒノキの土台や柱もシロアリの餌食になる、という立場の記事です。

専門業者の側からも、「ヒノキならシロアリに強い」は大きな誤解ではないか、「使えば安心」が危険なのはなぜか、という切り口の解説が出ています。ヒノキはマツなどと比べれば耐蟻性が高いのですが、そこに頼りきって木部と土壌の防蟻処理を省くと、深刻な被害につながります。薬剤処理をしていない場合、ヒノキでもシロアリに食べられてしまいます。

築50年近い住宅では、土台のヒノキの辺材だけが食べられた

実例が2つあります。

1つ目は、築50年近い住宅の浴室リフォームで見つかった被害です。工事中に深刻なシロアリ被害が見つかり、土台のヒノキは辺材の部分が食べられ、心材の部分だけが残っていました。心材は食べられず、辺材は食べられた、という構図がそのまま現れています。

2つ目は、ヒノキ材を使った防蟻試験です。ヒノキの上にシロアリが蟻道を築き、実験開始から約1カ月という短い期間で侵食が始まった例が報告されています。蟻道とは、シロアリが土や排泄物で作るトンネル状の通り道のことです。木材へ近づくための道を、ヒノキの上にも作ったことになります。

この2例から言えるのは、ヒノキだからといって、侵入も食害も完全には防げないということです。ただし1つ目の事例では、心材が残っていたことも見逃せません。ヒノキ全体をひとつの評価で語らず、心材と辺材を分けて考える必要があります。

別の被害事例では、ヒノキの芯材がボロボロになるまで食べ尽くされていたケースも伝えられています。ヒノキの心材を土台に使っても、シロアリ対策は万全にはなりません。香りがよく、固くて頑丈な木材は被害に遭いにくいとされますが、「遭いにくい」と「遭わない」は別の話です。

湿った木材は、樹種に関係なくシロアリの標的になる

水分も、樹種と並ぶ大きな要因です。木材の防蟻性を保つには、乾燥した状態を維持するのが大切です。含水率が上がった木材は、樹種に関係なくシロアリの被害を受けやすくなります。ヒノキの土台でも、床下の湿気や雨水の浸入で湿れば、防蟻性は期待できません。

ヒノキの耐朽性は「大」に分類され、屋外での耐用年数は7年から8.5年という情報があります。ヒノキは耐朽性に優れた樹種ですが、屋外に置いた場合の数字は10年に届きません。

つまり、ヒノキを選ぶ前に、土台を濡らさない設計ができているかを確認するほうが先です。ヒノキに投資しても、床下が湿っていれば意味が薄れます。

ヤマトシロアリは床下、イエシロアリは建物全体に被害を広げる

ヤマトシロアリは床下や浴室まわり、イエシロアリは家屋全体に被害が出ることを比べた図

日本の住宅で問題になる代表的なシロアリは、ヤマトシロアリとイエシロアリです。この2種は、体の特徴も被害の出方も違います。

項目ヤマトシロアリイエシロアリ
体色黒色茶褐色
羽アリが飛ぶ時期4月から5月の昼間6月から7月の夜
兵アリの頭細長く円筒状卵型
加害のペース緩慢急激
被害の範囲浴室や床下など建物の下部家屋全体

ヤマトシロアリは、湿った木材を食べて栄養と水分を摂ります。食欲はそれほど旺盛ではなく、加害はゆっくりです。被害は浴室や湿気の高い床下に集中し、通常は床下の部材から窓台のあたりまでを水平に食べ進みます。床下や土中の巣とつながって木材を侵すので、床下の環境を整えるのが有効な場合が多くなります。

イエシロアリは繁殖力が強く、古材よりも新材を好みます。食欲が旺盛で加害は急激です。被害は家屋全体に及び、家が倒れることもある危険な種類です。柱や筋交いなど縦方向の部材にも食い込み、天井裏まで被害が広がります。しかも木材に水を運ぶ能力があるので、乾燥している家でも大きな被害が出ます。

「乾燥していれば安全」という前提は、イエシロアリには通用しません。新築の木材を好む点も見逃せません。新しいヒノキの土台も、イエシロアリにとっては標的になりえます。

ヤマトシロアリとイエシロアリのどちらがいるかで、床下の点検で見るべき場所も変わります。ヤマトシロアリなら浴室まわりと湿った床下を、イエシロアリなら柱や筋交い、天井裏まで見る必要があります。羽アリを見かけた時期が4月から5月の昼なのか、6月から7月の夜なのかも、種類を見分ける手がかりになります。

D1樹種なら防蟻処理は不要という規定は、心材だけの話

制度の側にも、ヒノキを特別扱いする規定があります。木材の耐久性区分では、ヒノキやヒバなどの高耐久樹種が「D1」に分類されます。日本農林規格などには、D1樹種のうちヒノキやヒバなどの心材のみを使う場合は、防蟻防腐処理が不要と記載されている規定があります。

住宅性能表示制度の劣化対策等級3でも、地盤から1メートル以内の外壁の軸組などについて、薬剤処理以外の選択肢として、D1のヒノキなど高耐久樹種を使う方法が位置づけられています。

ここで押さえたいのは、この評価が心材を対象にしている点です。「心材のみを使う場合」という条件がついています。D1の特定樹種でも、辺材は腐朽やシロアリの被害を受けやすいのです。法令や制度の上では「不要」とされる場面があっても、実際の住宅で土台に使う角材に辺材が混じっているなら、その部分には保存処理を検討する必要があります。日本木材防腐工業組合の技術委員会が学術誌に同じ内容を載せたのも、この点を周知するためです。

制度の文言だけを読んで「ヒノキなら防蟻処理はいらない」と判断した場合、現場で辺材の混じった角材が使われても気づけません。見積もりや仕様書の段階で、心材のみの角材かどうかを確認しておくのが安全です。

新築時は基礎、防湿、薬剤処理を重ねて土台を守る

ヒノキに頼りきらないために、新築時に組み合わせられる対策があります。

基礎まわりでは、ベタ基礎が有力です。床下一面を鉄筋コンクリートで覆う構造で、シロアリが侵入しにくく、湿気も溜まりにくくなります。ただし完璧ではありません。基礎のわずかな隙間や継ぎ目からシロアリが侵入することがあります。基礎の下に防湿シートを入れる対策は、シロアリ対策のなかでも一番大事という解説があります。基礎パッキン工法による床下全周換気も、湿気をこもらせない環境づくりに役立ちます。

薬剤処理には2種類あります。1つは土壌処理で、床下の地面に薬剤を散布します。もう1つは木部処理で、新築時に薬剤を加圧注入した木材を使うか、現場で木材に薬剤を塗布します。

薬剤にも持続期間の違いがあります。ACQ加圧注入は効果が半永久的に続くとされています。ホウ酸系の薬剤も米国では一般的です。ホウ酸系の防蟻薬剤は自然には分解されないため、雨などで洗い流されなければ、効果が半永久的に続くとも言われます。一方、合成殺虫剤系の薬剤は、約5年で効果が切れます。

新築住宅には、基本的に5年間の保証がつく防蟻処理が施されていることが多く、その期間は別途の防蟻処理を考えなくて済む、という説明があります。新築なら築5年まではシロアリ被害に遭う確率が低く、築年数が古くなるほど被害が出やすい傾向があります。

防蟻処理は5年で切れ、30坪の再施工は20万円から40万円が目安

防蟻処理の効果は約5年で、30坪の再施工は1回20万〜40万円が目安であることを示したグラフ

合成殺虫剤系の防蟻剤は、約5年しか効果が続きません。公益社団法人の日本しろあり対策協会は、防除施工を行った建物について、建築物の保存対策と維持管理のため、5年を目途に再処理をすると定めています。同協会の防除施工標準仕様書は、令和7年10月版が公開されています。

費用の目安は、床面積30坪(約100平方メートル)で1回あたり20万円から40万円ほどです。防腐と防蟻の処理の効果が一般に約5年なので、再施工も5年ごとが目安になります。

ヒノキの土台を選んでも、定期点検と再施工の予算は別に見ておく必要があります。ヒノキの材料費が上乗せされる一方で、防蟻処理の費用がゼロになるわけではない、と考えておくほうが現実的です。

打ち合わせで確認したいのは、角材の部位、床下の湿気、薬剤の種類の3点

ここまでの内容を、施主が工務店や設計者に聞くべき質問へ落とし込みます。

最初に聞くのは、土台の角材が心材のみかどうかです。D1樹種の防蟻防腐処理が不要とされる規定は、心材のみを使う場合の話でした。辺材が含まれる角材なら、その部分に薬剤処理が要ります。「ヒノキ土台です」という説明だけで納得せず、辺材が入っているか、入っているなら処理をどうするかまで聞いてください。

次に聞くのは、床下の湿気対策です。ベタ基礎を採用しているか、基礎の下に防湿シートが入っているか、基礎パッキン工法で床下全周の換気が取れているか。この3つは、樹種とは無関係に土台の寿命を左右します。ヤマトシロアリは湿った木材を狙って床下から上がってくるので、床下を乾かす対策はそのままシロアリ対策になります。

最後に聞くのは、薬剤の種類と持続期間です。合成殺虫剤系なら約5年で再処理が必要になり、30坪で1回あたり20万円から40万円が目安でした。ACQ加圧注入やホウ酸系の薬剤は、効果が半永久的に続くとされています。ただし、ホウ酸系は雨などで洗い流されなければ、という条件がつきます。どの薬剤を使い、いつ再処理するのか、保証が切れる5年目にどう動くのか。契約の前に決めておくと、後で慌てません。

5年の保証が切れた後こそ、ヒノキの辺材が試される

新築の防蟻処理には、基本的に5年間の保証がつきます。築5年まではシロアリ被害に遭う確率が低く、築年数が古くなるほど被害が出やすくなる傾向があります。

ここが落とし穴になります。ヒノキの土台を選んだ施主ほど、「ヒノキだから大丈夫」と考えて、5年目の再処理を後回しにしがちです。ところが、築50年近い住宅でヒノキの辺材が食べられた事例のように、辺材は被害を受けます。薬剤の効果が切れ、床下に湿気が溜まり、辺材が柔らかく湿った状態になれば、ヒノキの土台は無防備になります。

一方で、同じ事例で心材が残っていた事実は、ヒノキを選んだ判断が無駄ではなかったことも示しています。心材は最後まで残りました。辺材だけを薬剤処理と湿気対策で守れば、ヒノキの耐蟻性が生きてきます。ヒノキを活かすのも殺すのも、辺材と水分の管理次第です。

ヒノキの土台についてよくある疑問への答え

ヒノキなら防蟻処理を省いてよいのか、という疑問への答えは、省けないです。辺材が1本でも混じれば、その部分は保存処理の対象になります。心材のみの角材を使い、床下を乾燥させ、点検も続ける。ここまでそろって初めて、省略を検討する余地が出てきます。

ヒノキとヒバのどちらが強いのか、という疑問には、国産の構造材ではおおむねヒバ、ヒノキ、スギの順と答えられます。ただしどちらも、辺材には防蟻の期待ができません。

築年数が浅いうちは安全なのか、という疑問には、築5年までは被害に遭う確率が低いものの、イエシロアリは新材を好むため油断は禁物と答えるのが正確です。

ヒノキチオールがあるから薬剤はいらないのか、という疑問には、辺材にはその成分がほとんどないため、薬剤処理は別に必要と答えられます。

ヒノキは防蟻処理の代わりではなく、上乗せの要素として使う

整理すると、ヒノキの心材には耐蟻性があり、辺材は食べられます。土台にヒノキを使っても、辺材部分の保存処理と防蟻処理は必要です。水分の管理、つまり床下の湿気対策と通気は、樹種以上に大きな意味を持ちます。薬剤の効果は約5年で切れるので、定期的な点検と再処理の計画が欠かせません。

ヒノキは防蟻処理の代わりにはなりません。防蟻対策に上乗せする要素として使うのが、いまのところいちばん堅実な付き合い方です。家づくりの打ち合わせでは、土台に使う角材が心材のみかどうか、辺材部分にどんな保存処理を施すか、5年後の再処理をどう計画するかを、必ず確認してください。

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