家づくりにおける地震対策には、耐震・制震・免震の3つの方法があり、それぞれ異なる仕組みとコストを持っています。耐震は建物自体を頑丈にして揺れに「耐える」構造、制震は制震ダンパーで揺れを「吸収する」構造、免震は建物と地盤の間に装置を設置して揺れを「伝えない」構造です。新築時の追加コストは、耐震等級3で約40万円から50万円、制震で約50万円から100万円、免震で約200万円から300万円が目安となります。
日本は世界有数の地震大国であり、2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震など、大規模な地震が繰り返し発生しています。これから家づくりを検討される方にとって、地震対策は最も重要な検討事項の一つです。この記事では、耐震・制震・免震の違いを詳しく解説し、それぞれのメリットとデメリット、コスト比較、そして最適な選び方についてご紹介します。耐震等級の仕組みや制震ダンパーの種類、補助金制度まで網羅的に解説していますので、地震に強い家づくりの参考にしてください。

耐震・制震・免震とは何が違うのか
住宅の地震対策には大きく分けて「耐震」「制震」「免震」の3つのアプローチがあります。それぞれの構造は地震から建物を守る仕組みが根本的に異なっており、コストや効果、メンテナンスの必要性にも違いがあります。
耐震構造の仕組みと特徴
耐震構造とは、建物自体の強度を高めて地震の揺れに「耐える」という考え方に基づいた構造です。壁や柱、梁などの構造部材を強化することで、建物が地震の力を受けても倒壊しないようにする最も基本的な地震対策となります。
具体的な耐震対策の方法としては、筋交いを入れる方法、構造用合板や耐力面材を使用する方法、柱と梁の接合部を金物で強化する方法、基礎をベタ基礎にしてコンクリートを厚くする方法などがあります。日本の建築基準法では、すべての建物に一定以上の耐震性能を持たせることが義務付けられており、現行の建築基準法に沿って建てられた住宅は、最低でも「耐震等級1」に相当する耐震性能を有しています。
制震構造の仕組みと特徴
制震構造とは、建物内に制震装置(ダンパー)を設置し、地震の揺れのエネルギーを吸収・軽減する構造です。「制震」は「制振」とも表記されることがありますが、意味は同じです。
制震構造では、地震による揺れのエネルギーを熱エネルギーなどに変換することで、建物に伝わる揺れを抑制します。耐震構造が「揺れに耐える」のに対し、制震構造は「揺れを吸収する」というアプローチをとります。制震装置は主に壁の中や建物の構造部分に設置され、地震時に作動して揺れを軽減する仕組みです。繰り返しの地震にも効果を発揮し、建物へのダメージを軽減できることが制震構造の大きな特徴です。
免震構造の仕組みと特徴
免震構造とは、建物と地盤の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造です。「免震」という名前の通り、地震の揺れから建物を「免れる」という考え方に基づいています。
免震構造では、積層ゴムやすべり支承などの免震装置が、地盤からの揺れを吸収・分散し、建物への振動の伝達を大幅に軽減します。揺れを建物に伝えないことで、建物自体だけでなく、室内の家具や設備へのダメージも最小限に抑えることができます。免震構造は3つの構造の中で最も高い地震対策効果を発揮しますが、設置コストやメンテナンス費用が高額であるため、主にマンションや公共施設、商業ビルなどで採用されることが多く、一般住宅への導入は限定的となっています。
耐震等級の仕組みと重要性
耐震等級とは、建物の耐震性を表す指標となる数値で、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の中で定められています。耐震等級は1から3までの3段階に分かれており、数字が大きくなるにつれてより高い耐震性能を持つことを示します。
耐震等級1・2・3の違い
耐震等級1は、現行の建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たすレベルです。震度6強から7程度の地震でも、即座に倒壊・崩壊しない程度の強度を持ちます。耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の耐震性能を持つレベルで、学校や病院など多くの人が利用する施設に求められる基準となっています。災害時の避難場所として使われることを想定した強度です。耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震性能を持つ最高ランクで、災害時の救護活動や復興活動の拠点となる警察署や消防署などに求められる耐震性能と同等です。
熊本地震が示した耐震等級の重要性
2016年4月に発生した熊本地震は、同一地域で28時間のうちに2度の震度7を記録した初めての地震でした。この地震では、建物の耐震等級によって被害状況に大きな差が生じたことが明らかになり、住宅業界に大きな衝撃を与えました。
国土交通省を中心とした調査委員会の調査によると、旧耐震基準(1981年以前)の木造住宅では214棟(28.2%)が倒壊しました。新耐震基準(1981年以降)の住宅でも83棟(6.9%)が倒壊し、2000年以降の住宅でも7棟(2.2%)の倒壊が確認されています。特に衝撃的だったのは、住宅性能表示制度における「耐震等級2」を取得した木造住宅が倒壊したという事実です。この住宅は建築基準法の最低基準の1.25倍の強度を持つとされていましたが、調査の結果、柱の直下率が47.5%(適正60%以上)、耐力壁の直下率が17.8%(適正50%以上)と、構造バランスに問題があったことが判明しています。
一方、耐震等級3で設計された住宅は、震源地周辺の地域でも「倒壊ゼロ」という結果でした。調査エリア内の耐震等級3の住宅16棟のうち、14棟が無被害、2棟が軽微または小破の被害にとどまりました。約9割が無被害という結果は、耐震等級3の優位性を住宅関係者に強く印象づけることとなりました。
耐震等級3取得の費用と経済的メリット
耐震等級3を取得するためには、主に2つの費用が必要です。1つ目は構造計算費用で約30万円前後、2つ目は第三者機関(性能評価機関)への申請・審査費用で約20万円前後かかります。合計すると約40万円から50万円が相場となります。また、耐震等級3を達成するために耐力壁を増やしたり基礎を強化したりする必要があるため、一般的な耐震等級1の住宅と比較して数十万円から数百万円の追加費用が発生することがあります。
しかし、耐震等級3には多くの経済的メリットがあります。地震保険料は耐震等級に応じて割引が適用され、耐震等級1では10%、等級2では30%、等級3では50%の割引となります。フラット35Sなどの住宅ローン金利優遇を受けられる場合もあります。さらに、万が一大地震が発生した場合でも建物の損傷が軽微で済む可能性が高く、修繕費用を抑えられるほか、売却時に資産価値が高く評価される傾向があります。
「耐震等級3相当」という表現への注意
住宅会社の広告で「耐震等級3相当」という表現を目にすることがありますが、これには注意が必要です。「耐震等級3相当」とは、耐震等級3を取得できる性能は備えているものの、第三者機関による正式な評価を受けていないことを意味します。正式に住宅性能評価書の交付を受けていない場合、住宅ローン金利の優遇や地震保険料の割引などのメリットを受けることができません。確実に耐震等級3のメリットを享受したい場合は、正式な認定を受けることをお勧めします。
制震ダンパーの種類と選び方
制震ダンパーには複数の種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。住まいの状況や地域の事情を踏まえて、適したものを選ぶことが重要です。
オイルダンパー(油圧ダンパー)の特徴
オイルダンパーは、シリンダー内をピストンが往復運動するときのオイルの抵抗を利用して揺れを吸収する装置です。自動車の「ショックアブソーバー」技術を住宅用に応用したもので、高い制震効果を発揮します。
オイルダンパーの最大の特徴は、震度1のような小さな揺れから震度7の大きな揺れまで、幅広い揺れに対して効果を発揮することです。100万回の作動試験をクリアするほどの高い耐久性を持ち、繰り返す余震にも強いのが特長です。製品自体がコンパクトで、主に外周部に設置されるため間取りの制約を受けにくい点もメリットです。また、既存の住宅でも比較的簡易なリフォーム工事で設置できます。一方、デメリットとしては、構造が複雑なため他のタイプに比べて価格が高くなる傾向があること、コンパクトゆえに1つあたりで吸収できるエネルギーが少なく設置本数が多くなりやすいこと、数年ごとにオイル漏れがないか点検が必要なことが挙げられます。
ゴムダンパー(粘弾性型ダンパー)の特徴
ゴムダンパーは、特殊な粘弾性のゴムを使用し、地震の揺れに対してゴムが伸び縮みすることで、地震のエネルギーを熱に変換して吸収する仕組みです。ゴムダンパーの特徴は、ゴムの伸び縮みする性質により繰り返しの地震にも対応できることです。日常の小さな揺れや台風などの風による揺れも吸収し、構造を守ってくれます。
大型のゴムダンパーの場合、他のダンパーよりも設置箇所が少なくて済むのもメリットです。また、一度設置すれば数十年間メンテナンスが不要な製品も多く、導入後の手間がかかりません。デメリットとしては、気温の変化に弱い点があります。暑すぎるとゴムが伸びすぎてしまい、反対に寒すぎると硬くなりすぎて効果が低下する可能性があります。また、装置自体が大型で間取りに制限が生じることがあり、設置には複数人の人手を要します。
鋼材ダンパー(金属ダンパー)の特徴
鋼材ダンパーは、鋼や銅、アルミなどの金属でつくられ、金属が曲がる時の力を熱エネルギーに変換することで地震の揺れを抑えます。大地震に対しては強い効力を発揮します。鋼材ダンパーのメリットは、構造材と一体化しやすく設計の自由度が高いこと、材料費が比較的安価であるためコストを抑えた地震対策が可能なことです。
一方、デメリットとして、鋼材ダンパーは大きな地震のみに対応する構造であり、小さな地震や日常的な揺れは吸収できません。また、繰り返しの揺れによって金属疲労を起こす可能性があるため、大きな地震の後には交換が必要になるケースもあります。
制震ダンパーの選び方のポイント
新築住宅の場合は、設計段階から制震ダンパーの設置を計画できるため、どのタイプのダンパーでも選択可能です。予算や効果のバランスを考慮して選択しましょう。リフォームや増築の場合は、既存の壁を開けて設置が必要なタイプや、外壁に設置できるタイプなど、工事の容易さも考慮して選ぶ必要があります。また、地域の気候も考慮すべきポイントです。寒冷地ではゴムダンパーの効果が低下する可能性があるため、オイルダンパーや鋼材ダンパーが適している場合があります。
免震装置の種類と仕組み
免震装置は主に「アイソレータ(免震支承)」と「ダンパー(免震ダンパー)」から構成されています。アイソレータは建築物を支えながら水平方向に大きく変形することで地震の揺れを軽減させる役割を持ち、免震ダンパーは地震のエネルギーを吸収して建物の揺れを減衰させる役割を担います。
積層ゴムの仕組み
積層ゴムは、ゴム(柔らかい素材)と鋼板(硬い素材)を交互に重ねた構造です。ゴムの柔らかさによって地震時に水平方向にゆっくり揺れ、地震の揺れができるだけ建物に伝わらないようにします。鋼板の硬さによって、重い建物を安定して支えることができます。積層ゴム支承には、ゴム材料自体が減衰性を有した高減衰ゴム系積層ゴム(HDR)、比較的線形性に優れ安定した復元力特性を持つ天然ゴム系積層ゴム(NR)、天然ゴム系積層ゴムの中心部に鉛プラグを挿入した鉛プラグ挿入型積層ゴム(LR)などがあります。積層ゴムだけだと地震がおさまった後も揺れが続き元の位置に戻るのに時間がかかるため、ダンパーと併用するのが一般的です。
すべり支承の仕組み
すべり支承は、建物の支柱の直下に土台を置き、それを「すべり板」と呼ばれるPTFE(四フッ化エチレン樹脂、いわゆるテフロン)を主成分とした材料で表面処理された鋼板が受ける構造です。すべり支承の特徴は、上側または下側のどちらかがボルトで固定されておらず、ツルツルに磨かれた金属板の上にただ乗っているだけという点です。地震時にはすべり板の上を滑ることで、地震の力を建物に伝えにくくします。すべり支承には「剛すべり支承」と「弾性すべり支承」の2種類があり、剛すべり支承は土台が硬い素材でできておりゴムを使用していないため耐火性が必要な建物に適しています。弾性すべり支承は柔らかな積層ゴムでできており、小さな地震の揺れも軽減できるため安定性を重視する建物に適しています。
転がり支承の仕組み
転がり支承は「ボールベアリング式転がり支承」または「直動転がり支承(CLB:Cross Liner Bearing)」とも呼ばれています。ボールベアリングが建物を支える構造で、地震時にはレールの上をボールベアリングが転がることで、揺れが建物に伝わりにくくなります。直動転がり支承は十字に組んだ鋼製のレールのような装置で、摩擦が非常に小さく、建物をゆっくりと揺らすことができます。鋼材同士が噛み合っているため、引っ張る力にもある程度耐えられるのが特徴です。積層ゴムだけの場合、地震の揺れで引っ張られると伸び上がってしまうことがありますが、直動転がり支承を併用することで引き抜きを防止できます。
耐震・制震・免震のコスト徹底比較
地震対策を検討する際、コストは重要な判断材料となります。新築時のコスト、リフォーム時のコスト、そしてメンテナンスコストについて詳しく見ていきましょう。
新築時のコスト比較
耐震・制震・免震の3つの構造について、新築時のコストを比較すると以下のようになります。
| 構造種別 | 追加費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 耐震等級3 | 約40万〜50万円+建築費増 | 構造計算費用と申請費用を含む |
| 制震構造 | 約50万〜100万円 | ダンパーの種類・設置数で変動 |
| 免震構造 | 約200万〜300万円 | 一戸建ての場合 |
耐震構造は、建築基準法に基づく最低限の耐震性能(耐震等級1)であれば標準的な建築費用に含まれています。耐震等級3を目指す場合は、構造計算費用と申請費用で約40万円から50万円、建築費用の追加で数十万円から数百万円がプラスされます。制震構造は新築時なら1棟あたり約50万円から100万円程度の追加費用で導入でき、免震構造よりも手頃な価格で導入可能です。免震構造は一戸建ての場合で約200万円から300万円程度の追加費用がかかり、3つの構造の中で最も高額であるため一般住宅には取り入れられにくいのが現状です。
リフォーム時のコスト
既存住宅に地震対策を施す場合のコストも考慮する必要があります。耐震リフォームの費用は、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査によると100万円以上かかった人が全体の70%を占め、平均費用は約150万8,929円という結果が出ています。横浜市の調査では設計費用45万円、工事費用305万円、合わせて約350万円が平均的な費用となっています。ただし、壁や柱の一部を補強する部分的な工事であれば100万円前後で済むケースもあります。
制震リフォームは、ダンパーの種類や設置箇所によって異なりますが約50万円から200万円程度が相場です。外壁設置型の制震装置は比較的安価な場合もあります。免震リフォームは、基礎と建物の間に免震装置を設置する必要があるため建物を持ち上げたり解体したりする工事が必要となり非常に高額になります。木造住宅の場合、免震リフォームよりも耐震や制震による対策の方が工期や費用の面で現実的とされています。
メンテナンスコストの比較
長期的なメンテナンスコストも重要な検討要素です。耐震構造は基本的に特別なメンテナンスは不要ですが、大きな地震を経験した後は構造にダメージが蓄積している可能性があるため専門家による点検が推奨されます。制震構造は多くの制震ダンパーがメンテナンス不要を謳っていますが、オイルダンパーの場合は数年ごとにオイル漏れがないか点検が必要な場合があります。免震構造は定期的な点検とメンテナンスが必要で、日本免震構造協会では竣工5年後、10年後、それ以降は10年ごとの定期点検を推奨しています。メンテナンス費用は年間約3万円程度かかるとされています。
保険料と税制優遇のメリット
地震対策は保険料や税制面でのメリットにもつながります。地震保険は耐震等級に応じて割引が適用され、耐震等級1では10%、等級2では30%、等級3では50%の割引となります。住宅ローン控除についても、耐震等級2以上の住宅は控除額が拡大される場合があります。また、フラット35Sでは耐震等級3の住宅に対して金利引き下げが適用される場合があります。耐震リフォームを行った場合、翌年度の固定資産税が2分の1に減額される特例措置もあり、この減税措置を受けるためには工事完了後3カ月以内に自治体へ申請する必要があります。
構造種別(木造・鉄骨造・RC造)と耐震性の関係
住宅の構造種別によって耐震性に違いがあるのかという疑問を持つ方も多いでしょう。結論として、木造でも鉄骨造でも鉄筋コンクリート造でも、建築基準法上満たすべき構造性能は変わりません。
木造住宅の耐震性
日本の注文住宅では木造が最も多く選ばれており、2021年の新築一戸建てにおける採用率は約9割を占めています。木造住宅は重量が軽く、建築費用を抑えつつ耐震性を高められるため多くの戸建て住宅で採用されています。木造建物は軽くしなやかなため、地震時の揺れが小さくて済むという特徴があります。実は「建物は軽いほうが耐震性が良い」のです。木造の主な工法には、木造軸組工法(在来工法)、木造枠組壁工法(2×4工法および2×6工法)、木質パネル工法(プレハブ工法)の3つがあります。2000年の建築基準法改正以降、木造戸建ての耐震性は大幅に向上しており、現在の基準に沿って適切に施工された木造住宅であれば耐震性に問題はありません。
鉄骨造・鉄筋コンクリート造の耐震性
鉄骨住宅は、柱や梁に鋼材を使用し、工場で精密に加工・生産されることで品質の安定性が高いという特徴があります。木造が「しなり」で地震のエネルギーを分散させるのに対し、鉄骨は鋼材の「ねばり」によって耐震性を確保します。鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造で、鉄筋は引っ張る力に強く、コンクリートは圧縮に強いという特徴があり、互いの弱点を補い合います。
構造種別によるコスト比較
平均坪単価が最も低いのは木造の約71万円で、鉄骨造の約103万円、鉄筋コンクリート造の約110万円と続きます。30坪の家の費用相場を計算すると、木造と他の構造には1,000万円前後の差があります。コストパフォーマンスを考えると、木造住宅で耐震等級3を取得し必要に応じて制震ダンパーを追加するという選択肢が、多くの方にとって現実的な選択となっています。
南海トラフ地震への備えと住宅の耐震対策
南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率は70%から80%とされており、想定されるマグニチュードは8から9です。南海トラフは静岡県から九州地方まで続く大きなプレートであり、震源域が広いのが特徴です。高知、宮崎、静岡、和歌山、三重など各地で最大震度7、太平洋側の沿岸部には10メートル以上の津波が押し寄せ、甚大な被害になると予想されています。内閣府が発表した被害想定では、死亡・行方不明者は最大約32万人、建物の全壊・焼失は最大約238万棟と考えられています。
住宅の耐震対策の重要性
このような大規模地震に備えるためには、住宅の耐震対策が不可欠です。1981年(昭和56年)以前に建てられた旧耐震基準の住宅は、震災時に相当の被害が予想されます。2000年(平成12年)以前に建てられた住宅も、現行の耐震基準を満たしていない可能性があり注意が必要です。震度4以上を経験した築20年以上の木造住宅は、耐震診断を受けることが推奨されています。各自治体では耐震診断を受ける際の補助金制度があり、その後の耐震改修についても各種の補助金が用意されています。
効果的な対策方法
南海トラフ地震のような大規模な揺れに備えるには、「耐震補強」で建物の強度を高めつつ「制振ダンパー」を設置して揺れの影響を軽減するのが最も現実的な対策と言えます。耐震補強としては、耐震壁を追加したり基礎部分を補強したりする方法があります。また、屋根が重い住宅では瓦を軽量な素材に変更することで揺れを抑えることができます。金銭的な理由で大掛かりな耐震改修ができない場合、地震で家が倒壊しても居住空間を守る「耐震シェルター」という装置を家の中に設置する方法もあります。
家の中の対策も重要
建物の構造対策に加えて、家の中の対策も重要です。家具が倒れたり物が落ちたりガラスが割れたりすることでケガをするケースも少なくありません。家具を固定して下敷きにならないような対策を行うことが重要です。ガラス窓には飛散防止フィルムを張ることで、窓ガラスが割れても破片でケガをするのを防ぐことができます。また、非常用持ち出しバッグを準備し、日頃から置き場所を家族で共有しておくことも大切です。
耐震・制震・免震の選び方とポイント
それぞれの構造にはメリットとデメリットがあり、予算や状況に応じた選択が重要です。
各構造のメリット・デメリット比較
| 構造 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 耐震 | コストが比較的安い、メンテナンスが少ない、設計の自由度が高い | 揺れがそのまま伝わる、家具転倒リスクあり、ダメージ蓄積 |
| 制震 | 耐震より揺れを軽減、繰り返しの地震に強い、免震より低コスト | 一部メンテナンス必要、耐震よりコスト高、完全には防げない |
| 免震 | 揺れを大幅軽減、家具転倒リスク低い、建物ダメージ少ない | コスト最高、定期メンテナンス必要、地下室が作りにくい |
予算別のおすすめ選択
予算を抑えたい場合は、耐震等級3を標準仕様としているハウスメーカーを選ぶことをお勧めします。一部のハウスメーカーでは追加費用なしで耐震等級3を提供しています。ある程度予算に余裕がある場合は、耐震等級3に加えて制震ダンパーを設置する「耐震+制震」の組み合わせがバランスの良い選択です。最高レベルの地震対策を求める場合は免震構造を検討してください。ただし、200万円から300万円以上の追加費用と年間約3万円のメンテナンス費用がかかることを考慮する必要があります。
新築時のポイント
新築住宅を計画する際は、できれば最初に建築士や営業担当者に「耐震等級3で建ててほしい」などと要望をきちんと伝えておくことが大切です。間取り(プラン)ができてから耐震等級を上げようとすると、壁が増えて理想のプランが実現できなくなってしまう可能性があります。耐震等級2と3で迷っている場合は、追加コストは極端に変わらないため耐震等級3を選ぶことをお勧めします。また、熊本地震の教訓から、単に耐震等級を上げるだけでなく柱の直下率や耐力壁の直下率など構造バランスの良い設計を心がけることが重要です。
リフォーム時のポイント
既存住宅の地震対策を検討する際は、まず耐震診断を受けることから始めましょう。多くの自治体で耐震診断の補助金制度があります。耐震診断の結果を踏まえて必要な対策を検討し、一般的にはまず耐震補強で基本的な強度を確保してその上で制震ダンパーを追加するのが効果的です。免震リフォームは木造住宅では現実的ではないため、耐震と制震の組み合わせで対策することをお勧めします。
耐震リフォームに活用できる補助金・優遇制度
耐震リフォームに活用できる補助金制度は基本的に自治体が運営しています。自治体によっては100万円以上の補助金を出す場合もあるため、活用しない手はありません。補助金の対象となる工事内容や要件、補助額は自治体ごとに異なります。一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が運営する「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」で、お住まいの地域の補助金制度を検索することができます。
減税制度と融資制度
リフォーム促進税制(耐震リフォーム)の適用期限は2025年12月31日までで、年末ローン残高(リフォーム費用相当分)の0.7%の所得税が控除されます。フラット35リノベは、中古住宅の購入と合わせて一定の要件を満たすリフォームを実施することで受けられる融資制度で、通常のフラット35よりも金利が優遇されます。リ・バース60は月々の支払いが利子のみとなる特徴を持つ融資制度で、2025年2月から耐震改修に対する利子補給制度が始まりました。
2025年4月からの変更点
2025年4月から、木造戸建ての大規模なリフォームが建築確認手続きの対象になりました。補助制度の申請にあたって、建築確認手続きの対象となる工事を実施する場合には、実績報告書に建築確認済証の写しと検査済証の写しの添付が必要になっています。
まとめ
家づくりにおける地震対策は、耐震・制震・免震の3つの方法があり、それぞれ異なる特徴とコストを持っています。耐震構造は最も基本的な対策でコストを抑えながら一定の安全性を確保でき、耐震等級3を取得することで熊本地震でも「倒壊ゼロ」の実績を持つ高い安全性を得ることができます。制震構造は制震ダンパーによって揺れのエネルギーを吸収し繰り返しの地震にも効果を発揮するもので、新築時なら比較的手頃な価格で導入でき耐震との組み合わせで高い効果が期待できます。免震構造は揺れを建物に伝えにくくする最も効果の高い対策ですが、コストが高く一般住宅への導入は限定的です。
現実的な選択としては、木造住宅で耐震等級3を取得し必要に応じて制震ダンパーを追加するのがバランスの良い方法です。南海トラフ地震など大規模地震への備えとして、新築・リフォームを問わずしっかりとした地震対策を講じることが重要です。補助金や減税制度も活用しながら、家族を守る安全な住まいづくりを進めてください。









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